世界がバグってる

AIの中の人のうめき声

政府・東京都が酒類制限の根拠とする研究がやばい

7/6に作成された研究のパイロット版の報告書にあんぐりでした。

資料は新型インフルエンザ等対策推進会議 基本的対処方針分科会(第 11 回)の103Pからの「新型コロナウイルス感染症の社会行動リスク解析:パイロット調査の暫定報告」と題された箇所です。

こちらは扱った記事。

研究の背景・目的

この研究の背景・目的は下記とのことです。

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まず「発熱外来等で新型コロナウイルスの検査を受ける者を対象として」とある時点で母集団に疑問を持ちました。コロナの検査を受けに来る時点で感染の心当たりがある=不特定多数と関わった可能性が高い人が中心になります。感染者が全くいない集団のみで完結する行動範囲の人が熱が出てもコロナを疑う可能性は低くなると思います。いつもそのメンバーだけで飲んでる場合、何も起きなくても陰性者に含まれない。むしろ、現状で不特定多数と飲んでる方が少ない気がしますし、そういう人の方が発熱外来に来る可能性は高いでしょう。陰性側の数が減るとサンプル数が少ない分、特に陽性が数人でも結構大きな影響になります。

研究方法

こちらの研究方法ですが、

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症例対照研究:発熱外来受診者においてアンケートを実施し とあり、これは嫌な予感。前回の東京都で飲酒を制限する根拠もアンケート( 新型コロナウイルス療養者(宿泊療養・自宅療養)の行動等に関するウェブアンケート調査結果)だったのを思い出しました。

前回のアンケートもおかしかったんですよね。そもそも、飲酒を伴う会食で感染したなら、濃厚接触を追って、そこで感染したかを明らかにできるわけです。自分がうつした相手、うつされた相手がいなければ飲酒を伴う会食は危険なシーンと言うか感染シーンとしてカウントされないはず。陽性者に含まれる"飲酒を伴う会食の参加者"はただの陽性者の属性というか行動の傾向であって、それをする人が何人いようとそこでうつってなければ感染リスクも何もないのです。

マスクに関しても同様で、下記の情報からマスクを97.6%が「常にマスクをしていた」「ほとんどしていた」であるのなら、マスクをしてる人からマスクをしてる人に感染ってるのでは?やっぱマスク意味ないの?と思うのが普通だと思うんですが、24.5%が「同居者以外とのマスク着用なしでの会話」をした、ということで「変異株はマスクを外してる僅かな時間でもうつるのでなるべく外さないように」という何故かマスク信仰が止まらない状態です。ちょっとした恐怖を感じました。たった1/4に満たない人が2週間の間にしたかも?で、3/4は絶対してない、なわけです。してない人は一度もしてないと答えられるので自信持ってだろうけど、したは一回でもなので「気がする」も含まれてるのでは?マスク外してた時にうつったとしたら、その会話の相手が陽性なはずですが、全く言及なく「アンケート」なわけです。というか、これ、予想外の結果なのに解釈でゴリ押しした感。「この24.5%はクラスター検査で実際、外している時に感染したことが判明しています」と言った方が印象が強くなるので、言わないのは違うのでしょう。アンケートが出てくる時は科学的な査読を通った疑いようのない根拠がない場合、もしくは臨床で統計的に有意な傾向が出てない時に登場するイメージがあります。

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研究のフロー

これがなんかおかしいのです。作為的に感じる絞り込みがある。

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この部分ですが、対象を「検査は、症状ありかつ/または濃厚接触者に実施」と書いているのに、「濃厚接触あり・記載なし:29名」が除外されています。ただでさえサンプル数が少ないのに。

行動歴の結果

で、「お酒のある会食」の件ですが。

このオッズ比は「会食参加なしまたは1回」を1としての(陽性の割合)/(陰性の割合)でつまりは (25%(酒有り陽性)/5.17%(酒あり陰性)) / (21%(参加無陽性)/89.5%(参加無陰性)) = 5.89 に対して、年齢・性別・基礎疾患で重み付けした模様。

しかし、よく見ると、会食2回以上も7/28でお酒のある会食と陽性が全員かぶっています。2回以上の会食でお酒飲まなかったら陽性にならないというサンプル群です。ありえないでしょ。酒にウイルス混ぜたのか?という感じ。それなら、酒なしにしたら時短要らないのでは?

で、サンプル数の少なさが問題で、何故か濃厚接触ありが除外されてたような記述ですが、会食は確実に濃厚接触ありなので、会食の一部が除外されているのでは?と邪推してしまう。で、減ったのは陽性7人(あれ、行動歴の場合8人減ってる)陰性22人(あれ、こっちも45人減ってる)です。陰性陽性がたった28件なので、もし減らした数が全部都合の悪い方に入る場合(陽性8人がお酒のある会食不参加で陰性45人が参加)だと、陽性は7/36=19.4%で陰性は37/277=13.3%となると(19.4/13.3=1.46)/(75/91.4=0.82)=1.78で更に調整すると減るので有意にならないという結果に変わります。サンプル数が少ないということは少しの数字の変化が簡単に結果を変えるということです。283件って嘘だろ、という感じ。お酒の部分なんて260件しか使われてない。10倍でも少ないような。

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あと、このアンケート結果だと出張以外の国内旅行のオッズ比が1.63で調整オッズ比が1.59でGoToトラベルは有意差なく感染リスクは限定的だったと言えるのも留意したいですね。

ついでにリスク要因

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これ、「マスクなしの会話」がオッズ比1.09で調整すると1.02ですね。このアンケートを飲酒が感染リスクを5倍にするというなら、「マスクなしに会話は感染リスクを1.02倍にする」と言ってマスクの無意味さを主張すべきなのでは。都合の良いデータしか使わないわけです。まぁ、マスクは気持ち程度の差という感覚の自分としてはそうだろうな、なんだけど、流石に1.2倍程度は差が出ても良い気がするのでデータどうなの感も。

「狭い空間での共同生活」がオッズ比1.27倍、調整オッズ比1.04倍ってホントかよ、という。シンガポールでそういう状況でクラスター起きまくってた気がするんですが。まぁ、サンプル少なすぎという話だけど2/16だけ陽性か・・・。

「大人数や長時間におよぶ飲食」が4/29で「お酒のある会食」が7/28って3人どこ行ったの?短時間だったということ?という不整合の謎も。長時間の定義もわからないですね。このデータでわかるのですが、陰性の母数が多すぎて陰性の対象者が少ないとたった4人、14%で感染リスク大の扱いになってしまう。

就業・就学の謎

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「25%程度・50%程度テレワーク」の方が「テレワーク行っていない」より感染リスク低いんだけど。もはや、データの偏りやばい。中途半端に出社すると感染症対策の意識が低くなるのでテレワーク止めましょう、ということになる。

アンケートの問題点

結局のところ、アンケートではサンプル数が十分にないと偏った環境に基づいたなんの役にも立たない情報になります。 また、それぞれの回答者の環境が全く違います。会食と言っても、恋人の距離感でナンパした相手を口説いてるシーン(2−2だと3人以上になります)と、お酒なしで取引先と広いテーブルで食べるのでは感染リスクの評価として比較対象にならないでしょうが、アンケートなのでそんなこと関係ないです。

そして、感染リスクを論じていますが、「お酒のある会食で感染する」ことと「お酒のある会食に参加する」は全く別です。前者は感染リスクを高めてると判断できますが、後者は感染リスクを高めてると判断できません。ただの陽性者の行動傾向であって、そりゃ、週に数回知らない人と合コンしてたりする人は他の行動でもリスクの高い行動をしてるでしょう。結局、感染リスクを論じるならアンケートなんて記憶だよりじゃなく、同じ条件で違う行動をする集団を比較しないと意味がないのでは。

現状、感染経路だと家庭が一番多いので、アンケートで「同居者がいて8時までに帰ってる」という項目があれば感染リスクはかなり高くなってるのでは?という。

まとめ

こんなものを元に飲食店いじめ、禁酒令をドヤ顔で正当化する都知事とか今の都民は不幸すぎる。